4人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「起きなさい、私の愛しい子よ」
眠る僕の耳にどこからか声が聞こえてきた。
その声はどこか心地よく耳にすーっと入ってくる。
何故か無視できなくて眠たいけど目を開け声の主を探した。
辺りを見回したが周りには誰もいなかった。
「どこを見ているのか。私はここにいる」
もう一度声がしたが聞こえてきた方を見ても誰の姿も見えずどこにいるのかわからない。
「どこにいるのですか」
「目の前にいる」
目の前......そこには何もない。
そもそもここには物すらないのだ。
僕が立っていることは分かるが、何もかもが真っ白で壁すら何処にあるのか分からない。
本当に床の上に立っているのか、それとも浮いているのか。
「まあ、見えずともよい。私の子よ、頼みを聞いてほしい」
誰が話しているのかもわからないままに話は進んでいく。
「再びあの歴史が繰り返されようとしている。私の子どもたちを導いてやってはくれないか」
”あの歴史”とは何のことだ?
それに気になっていたけど僕のことを”私の子”だといい、また別の人をも”私の子”だと言う。
声からして僕の親ではないのにどうして......。
「姿の見えないあなたは一体何者ですか!」
「言っているではないか。そなたは私の子、故に私はそなたの親である。そなたは運命に選ばれた私の特別な子の一人だ」
何を言っているのか一つも理解できない。
「そなたは他の人間よりも私の多くを与えられた存在。親なる私が創造した、神の子だ」
姿の見えないその声は、ただの機械的な言葉ではなく愛情に満ちていた。
本当に相手を愛おしく思うような声。
言葉を聞くだけで心が暖かくなる、そんな感じだ。
だが急に神の子と言われても理解できるわけがない。
「そなたしかいないのだ」
「..........はぁ、わかりました。それで僕は何をすればいいですか?」
最初のコメントを投稿しよう!