理想の妻像とは

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「あなたひとりで問題ないと高輪さんからはご連絡いただいているけど……本当に大丈夫なの?」 「高輪さんがそう言うなら、そうなんじゃないでしょうか」 「まったく……可愛げがないんだから。皆様に失礼のないようにね」  既に契約結婚にしてくれとお願いしたなんて言ったら、卒倒しそうだ。 「わかりました」 「また失敗して、お父さんを心配させないでちょうだい」  ……本当に、何しに来たのかな!? 「お母さんって本当に、お父さんのことがすべてだよね」  イラっと来たけどすぐに冷める。親子であることを、随分前にお互い諦めたような感覚だから、今更怒るのも疲れるのだ。ため息をついて呟くと、母が口を閉ざして目を見開いた。 「心配しなくても、お父さんお母さんの迷惑にならないようにします。それより、おじいちゃんのこと、よろしくお願いします」  祖父が先月退院して、今は実家にいる。ヘルパーさんが頼りになる人だし大丈夫だろうけど、家の中のことを取り仕切っているのは母だ。ここで母とやりあって、それが祖父の耳に入って心配をかけてしまうのは避けたい。  もう目も合わせずに、軽く頭だけ下げて新幹線の車内に乗り込んだ。  席に着いてから、つい色々と考えてしまう。  家族も上手くいかなくて、社会に出て最初で勤めた会社でもダメになった。高校や中学の友人はいるけれど、時々連絡を取るくらいで会うのは年に一度か二度くらいだ。  私が、上手くできないから。父と母が言うように、知らないうちに迷惑をかけているのかもしれない。  ふと、窓の外を見る。  まだ新幹線は走り出しておらず、眉を寄せた母が少し遠い場所から私を見ていた。
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