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風がなく、いくらか雲のある青空に、ここから真っ直ぐに昇る白い煙を見つめ、俺はそっと言った。
「おめでとう、佳奈」
葬儀はもう終わり、参列者がバスに乗って、最寄り駅へ向かった。
遺影と遺骨を助手席に乗せた自家用車で、そのまま俺は帰宅した。
車通りの少ない交差点の信号が赤く光った。ゆっくり止まり、俺は隣にそっと言った。
「俺の時は、お前がちゃんとお祝いしてくれよ、佳奈」
横の信号が黄色く光った時、声が聞こえた。
「任せなさいよ、徹」
佳奈の声だった。俺は隣を見た。隣には誰も居なかった。
「ブーッ」
いつの間に集まったのか、後ろの車にクラクションを鳴らされ、信号が青くなっていた事に気がつき、そっと発進した。
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