転機

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転機

✳✳✳ ――しかし、そんな僕にも転機が訪れた。 その日は、会社の創業記念かなんかで、会社から近くのホテルで小さな飲み会が開かれたときのこと。予想もしていなかった幸運が舞い込んだのだった。 「あ、富丘くん。お疲れさまぁ」 喫煙スペースへ向かう最中。前方からほんのり頬を赤く染めてやってきたのは、なんと金里さんだ。 「お疲れさま」 どこか気の抜けた、トロンとした目元。肌は血色が良く、色気ばんでいて。口調なんて、いつもの数倍砕けている。 ちょっと、スキだらけじゃないか? これで他の男性社員と話してたのかと思うと…ハラハラする。 「………酔ってる?」 無駄だと思うが念の為聞くと、案の定彼女はふるふると首を横に降る。 「酔ってないよ」 「……」 酔っぱらいはたいていそういう。 「富丘くんはいつも飲まないよね?」 「………好きじゃないから」
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