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とカッコつけたものの、あまり酒には強くない。
仮に、だが。
もし酔った状態で、彼女と二人きりになってしまったら、何をするか分かったもんじゃない。
恋情を拗らせすぎてる僕は、そんなイタい妄想にだって真剣だ。
この十年、必死にこの距離を守ってきたんだ。
そんなことで、無駄にはしたくない。
「ふふっ…富丘くんていつもクールだから酔った姿とか、ちょっと見たかったな」
ふにゃん、と彼女は笑う。なんだこれ。殺人級の破壊力。
「……別にクールじゃないよ」
「クールだよ? いつも冷静で、落ち着いているから、すごく頼れる。私が困ってる時もすぐに助けてくれるし。……すごく助かってる」
「君とは、同期だし」
そう戒めて、トロケた笑顔で僕を見つめるその顔から、視線をそらす。やばい。可愛すぎる。
「――じゃ、戻るね」
彼女はそんな僕に気づくわけもなく、横を通り過ぎて会場へ戻ろうとしたのだが……
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