あの日のこと

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「金里は……昨日づけで退職した」 は……? 全身に鳥肌が立つ。 「退職……? なんでいきなり」 「いきなり決まったんだよ。……ほら、しっかり働け! あいつの穴埋めは大きいぞ」 「――部長!」 部長はまるで詳細を聞かれるのを拒むように、僕の声を振り切ってフロアを立ち去って行く。 いきなり、辞めただって? 一瞬、結婚というワードが過ぎったが、すぐに頭を振る。 そんな話しも聞いていなかったし。むしろ、スマホを見てはため息をついているほうが多かった。 それに、もし、するのであれば 『富丘くん、聞いて』 とこっそり教えてくれたに違いない。 ――何かあったんだ。 連絡してみよう。 僕はすぐさまスーツのポケットからスマホを取り出し、彼女の番号をはじめてタップした。 しかし―― “おかけになった番号はーーー” 悲しいアナウンスが流れる。 「な、んで……。」
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