あの日のこと

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相棒のタバコを片手に、マンションの屋上でボーっと夜景を眺める。 いつもなら宝石のように見える都内の夜景が、今はぼんやりとモノクロの塊にしかみえない。 ただの同期でいいと思っていた。 しかし、いざこうなってみると、自分がいかに無力で、彼女から切り離された存在なんだと思い知り、心が抉られたように痛む。 会社で繋がった、ただの他人同士――か。 「あの会社にいる意味が無くなったな……」 この際しつこいくらい声をかけてくる友人の元へ、転職してしまうか……… 吐き出した煙を見送ってると、背後から、カタンと扉の開閉音がする。 屋上に誰かが入ってきたようだ。 なんだ……? こんな薄気味悪いところへ、深夜に訪れようなんて思う人はいない。 誰だかわからないが、今は邪魔されたくないな。 つけたばかりのタバコを灰皿へ押し付け、部屋に戻ろうとしたそのとき、 その人物を見て驚いた。
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