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「………金里さん……?」
距離があるため聞こえていない様子だが。間違いない。彼女だ。
十年も想い続けた相手。見間違うはずがない。
視線で追っていると、大きなスーツケースを引いて、僕のいる反対側の手すりへと手をかけた。
なんだ……? 様子がおかしい。
そして、彼女が手すりの向こう側へと身を乗り出したところで、慌てて走り出した。
――なにやってるんだ!
今までに無い全力疾走で彼女の元へと駆け寄った。
「――何してるの?」
あまり刺激しないよう、僕は静かにフェンスの向こう側の……今にも飛び降りそうな彼女に声かけた。
動きを止めて、色の無い瞳が虚ろに僕を映す。
あんなにキラキラしてた表情はそこには無い。
「……富丘くん……なんでここに」
その冷たい口調は、急に現れた僕に驚きながらも拒絶の意が強くにじみ出ている。
「死ぬつもり?」
「……そうだって言ったら、なに?」
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