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言いたくなかったら……なんて言いながら本当はそんな事思っていない。
彼女のことなら何でも知りたいし、何で突然こんな事になったのか、知りたくて仕方ない。
僕の真剣な視線を浴びているうちに、しだいに彼女の瞳が潤み揺れる。
あ……。
強く言い過ぎてしまったかもしれない。
僕は咄嗟にその小さくて壊れそうな身体を抱き寄せた。
胸いっぱいに、ギュッと。
「ごめん、怒ってるわけじゃない。すごく心配したから、……キツイ口調になっちゃっただけで……ちがうから」
はじめて正直な思いを告げると、腕の中で強張っていた彼女はハッと顔をあげて、
しばらく僕の目をまっすぐに見つめたあと、
やがて、肩を震わして、今度こそ僕の腕の中に体重を預けてくれた。
「……ありがとう」
それを切り出しに、ポツリ、ポツリと彼女は語り始めた。
ここ最近うちの部署は、大手企業との定期契約を控えていた。
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