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よろしく、と僕の肩を叩いた部長は、締まりそうなエレベーターに先に滑り込み、営業部と向かう。
僕の名前は、富丘真斗。
四年制大学を卒業後、大手企業の営業部に就職し、確か……今年で十一年目。
配属された頃は、この仕事の過酷さに、心も体もひどく悩まされることが多かったけれども。
幸い僕は、愛嬌は無いけれど要領はいい。営業職はそう悪いものでもなかった。
やりがいを感じるし、コミュニケーションは別に不得意では無い。
営業成績だって、良い方だったりする。
――将来有望。
そう言われれば聞こえは良いけれども。
僕の見ている会社は、ほんの一部分。
その裏では、沢山の人が傷つき、苦しんでいる姿を目の当たりにしてきた。
己の体裁と出世にしか興味のない無能な上司たち。
会社のため、という理由で切り捨てられた、沢山の社員たち。
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