あの日のこと

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何で、彼女がこんなにも傷つかなければならないのだろう。 そして、なぜ僕は、それに気づいてあげられなかったのだろう。 心が痛くて仕方なかった。 「金里さんはいつも頑張りすぎだ…。もっと周りを頼っていいんだよ。気付いてあげられなかった事が…苦しい」 だから、全部僕に委ねてくれないだろうか。 失うくらいなら、同期になんて戻れなくていい。 頬を滑り落ちた涙――。あの日の拭えなかったそれをすくい、 今日こそは迷わず涙に濡れた彼女の顔に、そっと顔を寄せた。 「とみお――」 戸惑いの続きは口付けで遮った。 初めて触れたそれは、思ってたよりも柔らかくて…… 一気に僕の余裕は取り払われる。 湯水のように溢れ出す、狂おしい恋情とずるい欲望。 声を聞きたいのに、そんな余裕もなく彼女の吐息を飲み込み舌を絡めてしまった。 切ない、苦しい、心が暴れる。身体が隠せないくらいに熱くなる。
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