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同時に、ひとつの決意に踏み切ることができた――
「――ねぇ、明日美」
「ん?」
「前に友人の……里人の会社に誘われてるって話したこと覚えてる?」
彼女は察したようにニコリと笑って頷く。
「覚えてるよ、もちろん」
彼女は何も言わないが、未だ僕の勤める、あの会社にいい思いはしないだろう。
無論僕だって、それは同じなわけで、彼女と家庭を築くために、ステップアップを考えていた。
「あの話、引き受けようと思うんだけど……、君はどう思う?」
彼女は今度はふふっと声を上げて笑い、そっと僕の手のひらに指先を絡める。
最近の彼女は、『言わずとも真斗のことはお見通し』と言った雰囲気だ。
それがくすぐったくも、言葉に言い表せないほど愛おしい。
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