そして、今―─

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「私は、どっちを選んでも応援するよ。今の会社でも、陽咲さんのところでも。真斗が真摯に仕事に取り組む姿は知ってるから。だから、やりたいことをやって欲しい」 予想通りの答えに思わず笑みがこぼれ、絡み合う指先を引き寄せて、彼女を胸に抱く。 緩やかな栗色のウェーブの髪が風に揺れる。シトラスの爽やかな香りがふたりを包む。 とても正攻法とはいえないけれど、ようやく手に入れた最愛の彼女。 かけがえのないこの時間が、何よりも愛おしく、胸が突き上げられる。 「ありがとう。それと……明日美」 「なに?」 「僕の“提案”に乗ってみて……後悔してない?」 問いかけると、彼女はパチクリと瞳を瞬かせて、少しだけ考える素振りを見せる。 これを聞くのは、はじめてだ。さすがに、少しだけ緊張する。 あの日の激情に流されるがままに、強引に彼女を自分のものにしてしまった、僕。
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