長年の片恋

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僕たちをロボットや駒のようにしか考えていない会社。 ――ブラック企業 入社して一年が過ぎた頃から、そんな不穏なワードが脳裏をよぎるようになった。 しかし僕は、営業成績はもちろんのこと、人間関係をそつなくやり過ごし、器用にこの淀んだ空気の中をなんとか生き抜いてきた。 一流企業の御曹司である友人から 『うちに来ないか?』 とよく心配されるが、丁寧に断ってきた。 僕には転職する理由がなかったから。 ……いや、ちがうな。 本当なら、将来を考えれば、友人の企業に行くべきなのだろう。 しかし、僕がこの会社にこだわる、大きな理由がある…。 営業部の扉をくぐり、自分のデスクに荷物を置く。 まだ就業時間前なのに、ぐったりとデスクに突っ伏した社員がちらほら見える。 いつもの光景だ。それこそ徹夜とか、深夜残業だって、安価でさせるのが、この会社だから。 「おはよう、富丘くん」
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