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「そんなことないよ。それに、周りなんてどうでもいい。君がいればそれでいいの」
エレベーターに足を進めながら、どこか不服そうな彼女にきっぱりと言い放つと、途端、明日美の頬がポッと赤くなる。
「……真顔でさらりと……」
「何度でも言うよ。十年かけて手に入れた“金里明日美”だけを愛してるって。それ以外、僕は、誰も見えないんだ――」
彼女の背後のパネルに手を突いて、期待に満ちる明日美へと、そっと顔を寄せる。
「もう逃さないよ。何度も言うけど、死ぬのは溺愛のあとにしてね?」
「……それは、いつまで続くの?」
「君が一番知ってるでしょ」
終わりなんてない。
僕より先に逝くことなんて許さないよ。
開閉を知らせるブザーを耳にしながら、抑えきれない想いを胸に秘め、柔らかな唇にキスを落とした。
――END
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