長年の片恋

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そんな空気を払拭する朗らかな挨拶。ドキリと胸が甘く鳴る。 「これ、部長から聞いてるよね? お願いします」 挨拶を返し振り向くと、同じ営業部所属の金里(かなざと)明日美(あすみ)に資料を手渡された。 漂うシトラスの香りに胸がキュンとしめつけられる。 「ありがとう」 「それと、これも時間あるときにチェックしてもらえるかな?」 「わかった」 ピンと伸びた背筋を見送って、小さく息を吐く。 ゆるくパーマのかかった焦げ茶の長い髪。 大き過ぎない二重まぶた。 鼻は少し高めで、いつも笑顔の唇。 高卒で入社した金里さんとは歳が四つ違うけれども、彼女と僕は同期だ。 同じ営業部に配属され、テキパキ働き、気が利いて器量のいい彼女。 別に、飛び抜けて可愛い訳ではないけれど。気がついたら僕の心には、彼女が住み着いていた。 ――彼女こそが、僕がこの会社にこだわる理由だ。
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