第3章 末路

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「間男が暴行で逮捕されても結局私は裏風俗に売られた。借金があったからね。だけどそのお陰でこの人に出会えた」 娘は良介の傍に近づくと、2人は肩を抱きしめ合った。 「コイツの身の上話を聞いた時、シンパシーの様なものを感じた。そりゃそうだ。俺達は親に少しでも歯向かい、そして負けた。親に人生を狂わされた者達。利害は一致し、俺達は親に復讐する事を誓った」 「あんたを味方にするのは簡単だった。あんたの性格を利用するだけでいいんだもの。竹井の録音を聞いた瞬間、あんたはころりと寝返った。本当に竹井にも感謝しなくちゃね。私があんたの娘だと知らずにベラベラと話してくれたもの」 「この淫売が……」 俺は娘を睨みつけながら呟いた。 「おいおい失礼な言い草はやめてもらおうか。俺の婚約者にしてこの豊倉商事の次期社長さんなんだからよ」 「しゃ、社長だと……」 「ああ。俺の所有する豊倉商事の株を全てやるんだ。親父から譲渡した株も含めれば彼女は豊倉商事の大株主となる。役員も株主も文句は言うまい」 「これが私の復讐。あんたが私らを見返す為に頑張って目指してきた椅子を私が座る」 娘は呆然と立ち尽くす俺を他所に社長の椅子へと座った。 「だけど約束は約束よ。社長にしてあげる」 そう言うと娘は不敵に微笑み続け、最後に俺に吐き捨てるように言った。 「おめでとう。これであんたも社長ね。倒産寸前の子会社だけど、せいぜい頑張んなさい」
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