第3章 末路

6/7
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
その日、残業していた俺の所に突然、強盗が侵入した。 賊は金品に目をくれずに、ある物を一つだけ奪うと早々に去っていった。 俺の命だ。 賊は俺を見るなり躊躇う事無く、拳銃で身体を数発撃った。 目出し帽を被っていたがそこから見える眼でかつての旧友(竹井)だと分かった。 俺は椅子から派手に倒れ、仰向けになってただ待っていた。 無様な死が来るのを…… 身体は徐々に冷たくなり、血は滝のように流れるばかり…… 裏切り者の末路はいつもそうだ。 長生きはできない。 この日が来るのは覚悟はしていた。 だが唯一、気がかりな事がある。 娘だ。 俺達は互いを裏切り、裏切られる関係だった。 そんな娘に最後のメッセージを送ってやりたい。 豊倉を出ていく時、言ってやりたかったが最後には意地が勝って言えなかった言葉だ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!