かいじゅうたちのいるところ

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 21世紀の半ば、世の中に『かいじゅう』病という奇病が溢れた。  『かいじゅう』になってしまう奇病だ。『かいじゅう』になった人はとても大きくなる。だいたいが10メートルくらいの大きさに。  10メートルっていうと電柱とか3階建ての建物くらいの高さ。  『かいじゅう』になった人は『かいじゅう』になったからといって暴れたりするわけじゃない。ごはんも食べないみたいだし、ぽわんと大きくなってそのままずっとぼんやりしている。たまによいしょ、と動いたりはするけれど。  それで今のところ『かいじゅう』というのは一度なってしまうと治ったりはしないらしい。死んだりすることもないらしい。とはいっても『かいじゅう』病が最初に発生してからまだ6年。だからまだ全然わからない。  研究も全然進んでいない。  死んだ『かいじゅう』も病気になった『かいじゅう』も、怪我をした『かいじゅう』もいない。だから『かいじゅう』が何なのかとか中身がどうなっているのかはさっぱりわからない。X線写真をとってみても外側の形がそのままうつるだけで中身はわからない。  一度どこかの誰かが『かいじゅう』の口の中に入ってみたけれど、その中はぬいぐるみの口のようにどこにも繋がっていなかった。よく考えたら『かいじゅう』はごはんを食べないんだから、そういうものなのかもしれない。  それでね、『かいじゅう』はとっても幸せになった人がなるらしい。  だから最近は幸せになっちゃだめなんだ。
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