眩しすぎた日々の反動

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眩しすぎた日々の反動

 学校生活も放課後も、なんだか全てが虚しかった。 彼女といた日々があまりにも輝きすぎていた。 彼に会いたい気持ちもあったけれど、なんとなくライブには行けず、彼の曲、彼らの曲を生活の節々で聴く事でどうにか過ごした。  そんな中偶然、彼女の彼氏にコンビニで会った事がある。 お互い買い物を終え、自然な流れで外で少し話した。 「元気だった?」 「はい。お元気・・・でしたか?」 「うん。会えて良かった。伝えたい事があって」 「何ですか?」 「すぐではないけど。デビュー出来そうなんだ」 「本当ですか!おめでとうございます!」 彼女が亡くなった時は、力なく、泣き過ぎた目は腫れ、私が知っている姿ではなかった。 でも今はステージ上での姿に、彼女の隣にいた姿に戻っている。 しっかりと前に進んでいる。 「応援、よろしくね」 「はい。これからの楽しみができました。ありがとうございます」  彼女が愛したその人と私が会ったのは、それが最後だった。 彼を含むバンドメンバー達はあっという間にこの街を去った。 夢を叶える為に、振り返る事もなく。 この時、彼にはもう一生会えないかもしれないと覚悟を決めていた。 私は想いを伝えなかった後悔よりも、彼が夢を叶える事を強く望んだ。  久しぶりにライブに行ったのは、彼女が亡くなってから1年後。 突然、彼女と初めて行った地下のライブハウスに行きたくなったのだ。 「あれ?久しぶり!」 明るく声を掛けてきたのは、彼女の中学時代の友達で、彼女とここに来た時に何度か話した事があった子だ。 「久しぶり!」 「本当に久しぶりだね。会えて良かった」 そこで会話は途切れ、なんとなく彼女の話はしない空気が流れていた。 おそらく今、彼女の話をすると、泣きそうになるのがお互い分かっていたからだと思う。 「そういえば」  先に話題を見つけたのは私ではなかった。 そこで語られたのは、彼のバンドについての事だった。 彼のデビューだけを楽しみにしていたから、その話は驚きでしかなかった。  彼はバンドを脱退した。 これだけは事実だと聞いたけれど、他の事は分からない。 デビュー日も決まっていた時の事だったらしい。 噂は沢山あった。 悪い噂もあった。 でも全て憶測でしかなく、私には知る術がなかった。 真実を知っているのはきっと彼と、バンドメンバー、そして彼らをデビューさせようとした会社の人達だけだ。  デビューは延期になったけれど、ベースに新しい人が加わり、バンド名はそのまま世に出る事になる。  彼の脱退を聞いた私は、物凄い哀しみに襲われた。 私の人生で彼女の死の次に訪れた、哀しみだった。 彼が別の道で音楽を始めなかったらどうしよう。 音楽をする彼を見られない。 会えなくてもいいから、どうしているのかだけは知りたい。  もし数ある噂のどれか一つが本当なら、音楽さえやめてしまうのではないか。 彼が今後演奏をせず、曲も作らないのなら、公園で彼女に貰ったあのCDと、いくつか出したアルバムだけを頼りに生きていくしかない。  彼と暮らし始めたばかりのある時、深夜の音楽番組に彼がいたバンドの新曲の映像が流れた事があった。 幸い彼はお風呂に入っていて、見ることはなかったけれど、私は一人でかなり動揺した。 人気が出ると、彼の目についてしまうかもしれない。  すごく不安になっていた。 ただ実際は、彼はバンドの現状を知っていた可能性もある。 もちろん、情報を入れないように避けていた可能性もあるけれど。 自分のいなくなったバンドに、どうなってほしいと思っていたのだろうか。    でも、バンドは世間一般的にはヒット曲を出す事もなく、解散する。 私はそれを知った時、ホッとしてしまい、すぐ彼女に罪悪感を覚えた。
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