22人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前の騒ぎはまだまだ続いていた。
「今、作業中のデータはどうなるの?明日が納期で徹夜で仕上げたのに!」
「会社のデータなんか正直どうでもいいけど、レアもんのフィギュア触られるのは困るんだが」
「人一人死んでるってのにアニメグッズの心配?大した同僚だな」「何だと!」
「てか日沢さん、本当に殺されちゃったの?どういうこと?」
「静かに!」
人だかりの真ん中からひときわ通る声がした。皆を制したのは黒のワンピースを着た地味なまとめ髪の、それでもどことなく存在感のある女性だった。
「あの人がうちの社長。小堀聡香(こぼり さとか)さん」
彼がひそひそ声で教えてくれた。
「君、大変な日に入社しちゃったよね。でも、辞めないでよう」
ーーというかあんたこそ、社内で殺人事件が起きてこんなにゴタゴタしてんのに平常心すぎないか……?
不謹慎だ、なんて言う気は毛頭ない。人の感じ方なんて人それぞれだし、心の中ではものすごく動揺しているのかもしれないし……だがこのマイペースっぷりはよほど鈍感なのか、あるいは大物か?
最初のコメントを投稿しよう!