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ミンリンカンリ社は「アケチ」のメンテナンス及びセキュリティ業務の一部を請け負っている。今回の殺人事件はいわば日本警察、いや日本政府最高峰レベルのセキュリティをかい潜り司法の心臓部が撃ち抜かれかねない重大事件だ。
大げさに言えば未来の日本警察の威信をかけて、平たく言うと発注元の責任者自ら事件捜査に乗り出したわけだ。
確かに異例は異例だが、皆が動揺したのはそのことだけではなかった。
一言で言うと家入室長は職業選択を間違えたとしか思えないほど、日本人離れした美貌の持ち主なのだ。若くして出世したにしても、役職からするとそれなりの年齢のはずなのにずっと若く見える。明るい焦げ茶色のカールのかかった髪に暗色系のスーツ、ノーネクタイの黒シャツという出で立ちは、銀縁の眼鏡をかけていても官僚や警察官には到底見えない。
もっと言えば昼の仕事をしている人にも見えない。
「まず、被害に遭われた貴社社員・日沢亜澄様には大変お悔やみ申し上げます」
派手な見た目と甘めの声とは対照的に、彼の口調は覇気に満ちてきびきびと淀みがない。
「警視庁捜査一課の協力の下、誠心誠意一日も早い事件解決を目指します。さて本日の家宅捜索は、内部犯行の可能性があり且つ証拠隠滅の恐れが大きいと裁判所より認められ、許可が出されたものです」
「内部犯行」との言葉に皆は再びざわついたが、彼は構わず話を続けた。
「『アケチ』のシステムまたはそれに関わる情報を狙った犯行の可能性もある以上、皆さんの端末及びデータも回収、解析、調査させていただくことになります。データの保全については保証いたしますが個別の細かい要望については聞き入れることができません。あらかじめご了解の上、協力ください」
口調は丁寧だが、この人の言葉と眼力にはちょっとやそっとでは逆らい難いような圧がある。
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