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「そして任意という形ではありますが、貴社の社員全員から事件当時の行動や日沢さんとの関わりについて聴取を取りたいと思います。リモート対応でも構いませんので、ご協力お願いします」
場は再び騒然となったが、小堀社長の
「家入室長自ら、業務関連のデータの重要性を上層部に訴えての捜査本部長就任と聞いています。私と彼らを信じて、今は事件解決に協力して欲しいの」
という訴えにひとまず鎮まった。
「本日は全員自宅待機をお願いします。明日以降の業務やメンタルケアに関する相談は一斉メールで連絡します。それ以外の質問は個別に私の方まで」
家宅捜査に立ち会う社員以外は諦め気味に三々五々帰り始めた。
エントランスの一角に被害者の祭壇が設えられていた。この会社の人事課に勤めていた日沢亜澄さん、二四歳。
家入さんは彼女にしばらく手を合わせていた。昨日未明、彼女はこの敷地内で(おそらくさっきロープが張られていたあたりで)銃殺体で発見されたのだ。
二一世紀の半ばを過ぎた現在においても、日本は世界でも屈指の銃規制が厳しい国であることは変わりがない。しかも警察庁の仕事ーー賛否両論がありながら鳴り物入りで推し進められている、完全AI捜査システム実験に関わる業務請け負い先で、である。
AI捜査に反対し阻止しようとする者、捜査データやシステムを狙う者ーー内部犯行の可能性が大きく背後にどんな勢力がいるかもわからない。警察組織が単独の殺人事件にしては異例の体制を組んで捜査に本腰を入れるのも無理はない。
日沢さんと何の面識もない僕だが、無事に犯人が捕まえられるよう手を合わせた方がいいだろうか……と考えていたところ、突然家入さんが頭を上げ、こちらを振り返って歩いてきた!
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