ミンリンカンリ

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「麓藍(ふもと らん)さんですね?」  焦る僕を視界の端にすら入れることなく、家入さんはさっき僕を案内してくれたアニメタルTシャツの彼に話しかけた。 「第一発見者だとお聞きしました。お話を伺わせてください」  目つきが猛禽類そっくりだ。この人ナチュラルに美形の皮かぶった恐怖の大魔王みたいな人だな。僕は戦慄したが彼ーー麓君は割と平気そうだった。 「ああー、そうなりますか。そうでしょうね……」  彼が第一発見者?さっきそんなこと一言も……いや、僕だって事件の話なんか敢えて聞かなかったけどさ。 「でも、話なんて昨日刑事さんに話したのと一緒ですよーーああ、あちらは警視庁の捜査一課で、そちらは警察庁。縦割りですもんね」 彼は肩をすくめた。一見協力的だが言葉の端々に棘があって、ほんのり敵意すら感じる。 「徹夜の仕事明けだったんですよ。倒れてる日沢さんを見つけて、聴取やなんやかんやで昨日は帰りそびれて……せめて着替え取りにくらい帰りたいんですが」  そこで僕やスェットの彼女に遭遇して三たび帰りそびれてしまったのかーー悪いことしちゃったな。いい奴には違いないんだろう。 「お時間は取らせませんので」  目が笑ってない低姿勢の家入さんは余計に怖かった。奴がよほどの強心臓なのか超鈍感なのかはわからないが、あくびを噛み殺して答えた。 「わかりました。いいですよ」
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