ミンリンカンリ

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二〇六一年十月一日。僕、渡瀬 一太郎(わたせ いちたろう)はこうして炎上への参加を思いとどまった。紆余曲折の末、二九歳でせっかく決まった会社員デビューだもの。  匿名であってもこういった炎上騒ぎへの参加は個人を特定されやすく、リアルの社会的信用に致命的に影響する。なのに炎上は無くならない。  その上、何でもかんでも視覚化される世界というのはイベントでも炎上でも文字だけの倍以上疲れる。血気盛んな若い者はいいかもしれないが……いや、むしろ痛いオッサンオバサン達が張り切ってたりして。  何でもかんでもリアルならいいってもんじゃない。SNSや掲示板は二次元時代がよかったなーー最近の技術について行けてないのって、すでに年寄り化が始まっているのか?  突如、そこに象に乗り、金色の衣装をまとった数十人ほどの派手な集団が現れた。彼らにかしづかれたリーダーらしき人物が、大きな声で語りかけてきた。
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