エクストリーム

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 あれから「アケチの生みの親」だという設楽博士のことがちょっと気になって調べてみた。  錚々たる経歴を持った一流の科学者で、科警研時代に現在のアケチのシステムの基礎を完成させた。その功績そのものは、もっと華々しく喧伝されていたっていい。  だが、設楽博士というのはよく言えば一流の科学者としての地位に安住しない、もっと高みを目指す向上心の固まりのような人で、悪く言えば世俗に関心が持てず一つの場所に落ち着くことのできない人だったらしい。  アケチの完成後、科警研を辞めて宇宙飛行士に転身した。宇宙からを見てから人生観、自然観が180度変わったとして研究生活から引退、限界集落だった離島を買い取り、半分宗教、半分スピリチュアル系の自己啓発のような独自の思想を元に、ごく限られた支援者達と共に自給自足の共同体を形成して晩年まで暮らしていたらしい。  会の理念の一つに「パーソナルカードに頼らない暮らし」を掲げていたので、北岡さんも同じ科学者としてのリスペクトから影響を受けたのかもしれない。過激な思想や法に触れそうな動きなどは特になく、内部で自己完結している集まりだなったようだが、警察庁の「功績者」として前面に押し出すにはなんとなくためらうキャラクターなんだろう。それであの微妙な記念資料室の扱いなのか……  それに博士が未婚だとしても信者とハーレム状態じゃなかったなんて保証はないし。
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