エクストリーム

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「そんな細かいこと、よく覚えていたなーーだから俺がここを買い取り、大企業や政府に戦いを挑むと?次の目標としてはそれも悪くないがーー少なくとも、一旦稼働すると次のメンテナンスまで十年以上は封印されるニュートリノ観測装置の内部を、一度見てみたかったのは確かだね」  僕はそこで初めて気がついたのだが、ゴンドラの降りてきた先、夜空の一部が四角にぽっかりと切り取られ、オレンジ色の十字座がさっきよりずいぶん近いーーゴンドラが降りて近づいて来たというのは僕の錯覚で、水面の方が上がっていたのだ。 「ガラス製で内部が真空である検出器が破損すると『爆発』ならぬ『爆縮』が起こるという。観察のためにここに満たされる超純水は、濃度勾配によって人体のミネラル分を奪い徐々に死に至らしめる……というのは本当なのか」  エクストリーム・カミオカンデのタンク内にはまさに建設以来初めて、本来の陽子崩壊や素粒子観測に用いられるべき超純水が満たされようとしていた。 「くれぐれも溺死することなく、俺のちょっとした好奇心に答えてくれーー親友よ」  ゴンドラとの距離が再び開き始めた。 ーーこいつ、楽しんでる……
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