エクストリーム

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 音量に耳がやられて頭の中ごとぼうっとしたまま水中に放り出され、上下もわからない。  不規則に渦巻く暗い水の中にはオレンジの乱反射と細かい気泡に混じり破損したセンサーの微細なガラス片が舞っていて、切り刻まれる激痛の上に目も開けられない。  カナヅチなのでパニックになりかけたが、高校時代の救急救命の授業を思い出し、肺の中の息を保ったまま脱力した。  水面に浮上していく感覚があり、きっと助かる、もう少しの我慢だと思ったーーが、最後に頭上に現れたのは水面ではなく固い巨大フロートの底だった。  端を探してつたい泳ぎするには息がもう限界だ。声を発することもできないまま絶望で正気を失った。 ーーうわあああああああああああああああ!   自分の叫び声で気がついた。 ーー息っ……息が……できてる?  僕は水中ではなく、でこぼこした冷たい床の上に横たわっていた。辺りは真っ暗で何も見えずーーいや、目と耳を含む頭の上半分が何かに覆われている。 ーー助けられた……?いや……  おそるおそる身を起こし、頭に取り付けられていた樹脂製の装着品をどうにか外したが、辺りが真っ暗なのは変わらない。水中から助け出されたにしては衣服も濡れておらず、無数のガラス片でできた傷も一切なかった。  自分の身体の次は頭から取り外した物を触ってみた。どうやらVR用のゴーグルのようだーー今までこの真っ暗な部屋で仮想現実を見せられていた、ってこと?
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