ハジマリ

2/7
前へ
/293ページ
次へ
「あの島に今も住む創設時のメンバーと決別し、彼の活動を支えたと思われる急進的なメンバーは全国……というより全世界に散らばっているので行方を追っています。あの島に残っているメンバーは高齢化し、オリジナルのコミュニティはほとんど介護施設のようになっているそうですが」  僕の知らないランを育んだかもしれない場所。  爆縮事故の瞬間、家入さんは咄嗟に近くに落下した宮村さんを咄嗟に捕まえ、フロートにしがみついた。その最中、イー・ツェイーーランがゴンドラから水中に転落した瞬間をはっきり目撃したという。  彼の生存は絶望的だと見られたが、死体は結局発見されなかった。  浸透圧で体液が云々……というのが本当かどうかはおいておくにしても、海なら沖合並の水深の密閉されたタンクの中は逃げたり隠れたりできる場所もないはずで、何らかの原因で排水システムの隙間から自然界の複雑な地下水路の中に流れ去っていったのだろうというのが、家入さん始め大方の警察関係者の見方だった。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加