ハジマリ

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 廃坑道から運び出された僕は、そのまま地元の病院に救急車で運ばれて検査入院することになったが、二日後には東京に戻ってくることができた。  その頃には高速道路運営会社と交通警察の不眠不休の奮闘で交通システムは正常に戻っていた。行政系のセキュリティも早急に見直す方向に向かっている。  当日は路上の混乱以上にネット上が道路会社と警察を叩きまくる阿鼻叫喚地獄でサーバーが落ちまくりだったそうだ。が、ネット世論なんて瞬間湯沸かし器みたいなものだ。  奇跡的に重大事故もなかったこともあって、大騒ぎした連中のほとんどがけろっと忘れ、次の叩き先に熱心に飛びついている。  家入さんのAI捜査ネットワーク構想はあと数年もすれば本格始動にこぎ着け、検挙率は上がるだろう。  だがそれだけではこの国の行こうとする方向までは変えられない。犯罪が無くなり誰もが安心して暮らせる世の中になることとそれとは、きっとまた別のことだ。 「宮村滴は軽傷ですぐ意識を取り戻したのですが、黙秘とハンストを続けています。点滴は受けているのですぐ命に別状があるということはなさそうなのですが、自供以前に洗脳を解いて心的外傷のケアをする必要がありそうでーー色々と根が深すぎて時間がかかりそうです」
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