ハジマリ

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 少しの期間想い人だった人から銃口とともに明らかな殺意を向けられたショックは残っていたが、ランに強い影響を受けて利用されていたであろうことには同情している。  さすがに懲りずに恋愛感情を抱くほどの鋼メンタルはないが、せっかくお互い生きているんだし、何年も経ってから宮村さんと穏やかに話せる日が来るといいなあーーと、希望的観測的なことをぼんやりと考えてみる。  何よりランから受けたショックの方があまりにも大きかったし、当のランに対してだって「何故こんな事を」というやり切れない疑問や深い喪失感はあるものの、憎しみや怒りといった感情は不思議と湧いてこないーー僕、やっぱり感情のスイッチとか対人的な情緒とかがどっかおかしいのかな。    裏切りとか絶望とか軽く死にかけた経験とか。  それらがショック療法になったかどうかはわからないが、それでも以前よりは楽天的な性格になったし、コミュ障も克服できているような気がする。 「もし自供がとれなくてもアケチによって、真相解明はできるでしょう。神出鬼没だったイー・ツェイのIPアドレスもある程度わかりました。ドゥグルザナ共和国の関与も疑われるので崔が今、特別捜査チームの一員として秘密裏に入国しています」  やはり巧妙に仕組まれた世界転覆の壮大な陰謀だったのか、それとも……
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