ハジマリ

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「宮村と言えば、ミンリンカンリの屋上庭園の花壇からは防水ケースに入れたメモリーカードと某公共施設のコインロッカーの鍵が見つかりました」 「メモリーカードは鏑木さんのですね?」「はい」  家入さんはやや困惑したようにこうつけ加えた。 「そしてコインロッカーの中からは十中八九、廃棄されたと思っていた私のジャケットが……」 「……」 ーーそれとも激しい恋慕に似た嫉妬と憎悪かーー 「それより……イー・ツェイのーー麓君の捜索なのですが、今日で打ち切ることになっています」  家入さんにしては珍しく、気遣わしそうに僕に対する言葉を探していた。 「君に約束していたのにこんな結果になって……何と言っていいか」 「ランの選んだことで、ランの人生ですから……」  僕がきっぱりと言うと家入さんは意外そうな顔をした。もしかするとサイバーテロリストかつ殺人犯として生物学上の弟を追っていた彼の方が、僕以上に複雑な心境なのかもしれないが、そこまでつっこんで聞いてみる勇気はまだ無かった。  あれだけのことをやってのける才能と人を引きつける力があったら、もっと別な道を選べただろうと思うのに……ランにとってのこの結末が、どうしても選ばなければならない道の果てだったとは思えないし、そもそもランにとっての僕の存在は何だったのかーー
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