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「今日入る予定の新入社員だろ?さっき、業務連絡でプロフィールが回って来てた。名前は確か……」
「渡瀬だけど……ってことは君、本当にここの社員?」
いかつい外観に似合わず、自由な社風だとは聞いていたが。
「そう。俺は……」
「すみませーん、あなた達ここのーー」
さっきとは別のリポーターが目ざとく僕らを見つけて追いかけてくる。
「正面から入るのは大変そうだからこっちに来て。急いで」
汗だくでくたくたの上、彼について意外と広い会社の周りを半周ほど小走り羽目になった。裏には献花台が設けられ、たくさんの花や菓子が供えられていた。通用門があったから、この内側に被害者が倒れていたんだろうーー胸が痛んだ。
若干人だかりはあったが、表ほどの騒ぎではない。
「普段は日中、こちらは閉められてて正門からしか出入りできないことになってるんだ。でも今日だけはああいう状態だから、特別にこちらからでもチェックを受けて入れるはずーー」
彼が門のスキャナーに左手首をかざし、パーソナルカードに記載されたIDを読み取らせると門が開いた。僕も後に続き、すんでのところで記者をかわした。内側にもう一つ門があり、生体認証によるチェックを受け、金属探知機を通った。初出勤の僕はさらに警備員による目視と口頭の確認を受けた。
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