ミンリンカンリ

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もはや凄まじいほどの利便性の反面、万一紛失や盗難に遭い悪用された場合のダメージは計り知れない。現にほんの一瞬の不注意のせいで、何の不自由もなく生きてきた一般市民が他人になりすまされて一夜にして借金地獄に転落するなど、法律では救済しきれないほどの損害に見舞われる事例が続出した。  そこで人体に無害とされる埋め込み式の超小型のチップが開発されてからは、出生後に親が医療機関で施術させ半永久的に埋め込んでしまうことが常識となった。 「厳重で驚いた?まあ、業務が業務だからね。でも、中に入っちゃえばゆるいから……業務機密以外はね」  彼は慰めるようにそう言った。実際目の前に現れた社屋は屋上とテラスを花と緑に彩られた、瀟洒でモダンな低層階デザイナーズマンションーーといった雰囲気だった。  ただ、敷地の芝生のあちこちに貼りめぐらされた「立入禁止」の黄色いテープと歩き回る制服姿の捜査員が凄惨な事件現場であることを物語っていた。  彼が案内してくれた正面玄関のエントランスは開放的で広く高級感があったが、表の野次馬以上に殺気だった社員たちが詰めかけていて、殺伐かつ騒然としていた。 「家宅捜索ってどういうことだよ?」 「私たちの作業部屋をあちこち無神経にひっくり返すってことですか?」 「まさか端末や私物まで押収されたりしないよな?」  案内してくれた彼が肩をすくめた。 「俺も同感だな。サイバー捜査課だか何か知らんけど、お役所の人達ってそれっぽい肩書きつけただけのズブの素人だからな。そんな人らにデータをいじられたくない」 「家宅捜索?君たちも捜査対象ってこと?」 「そう。建物の出入りはご覧の通りで、外部の人間ーーたとえば売店もセルフで人の出入りを極力制限している。内部の人間にしか不可能な、半密室殺人ってわけ」 「……」  
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