出会い

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 一瞬そんな考えが浮かんだけれど、私はとっさに否定した。    シリウスは表面上、私の死を悼み真剣に考えてくれている様子だけど、本心は分からない。    ダニエルのように、婚約者がいながら平気で妹と親密になる男。  両親のように、利用価値がなくなれば子供すら捨てる親。  人間はいとも簡単に心変わりし、他人を裏切れる。   (簡単に、シリウス殿下を信じることは出来ない)    小説内のシリウスは、兄王子(メイナード)を押しのけて王座を狙うような男。迂闊に話してはいけない。 「申し訳ございません。私も、エスターの死については何も知らないのです」    私の返答に、シリウスは表情を曇らせ「そうか」とだけ言った。   「時間を取らせて、すまなかった。今日は会えて幸運だった」  シリウスは、用事は済んだとばかりに背を向けた。少し離れたところに控えている護衛騎士を伴って去って行く。  入れ替わるようにソニアがやって来て、私達も馬車に乗り込んだ。緊張の糸が切れた私は、堪えきれず「はぁ」と深くため息をつく。
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