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晩年、退位したシリウス前国王とアデル王太后は、森と湖が美しい静かな場所で余生を過ごした。
年老いてもなお仲睦まじい様子は変わらず。おしどり夫婦とはまさに彼らのことだと、ソニアは常々思っていた。
うららかな春の昼下がり。柔らかな陽光降り注ぐこの日も、二人は並んで森の中を散歩したあと、湖畔のベンチに腰掛けた。
寄り添い湖を眺め、時折ぽつぽつ言葉を交わす。
すべてを言わずとも、お互い何もかもを理解しているのだろう。通じ合っている雰囲気があった。
珍しく、無口なシリウス様がこんなことを言った。
「アデル。俺は、君を幸せに出来たかな」
静かな問いに、アデル様が「ええ」とにっこり頷く。
「それはもう、沢山。夢かと思うくらい、幸せな日々でした」
シリウス様は「良かった」と言い妻の肩を抱き寄せた。アデル様も安心しきったご様子で、愛する夫の肩に頭を乗せる。
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