不要のスペア

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不要のスペア

 アストレア王国には、二人の王子がいる。    ひとりは、国王陛下と正妃の間に生まれた第一王子メイナード。    もうひとりは、陛下が侍女に手をつけて産ませた第二王子シリウス。  一歳違いの異母兄弟は、天国と地獄のような、まるで正反対の人生を歩んできた。  正妃の子供であるメイナードは、次期国王として幼い頃から教育を施され、王宮でそれは大切に育てられた。  一方、シリウスをみごもった侍女は正式に側室として迎えられることなく、辺境の離宮へと追いやられた。  そして息子を産んだあと、数年で病死。ひっそりと葬儀が執り行われ、人々の記憶から消え去った。  本来ならシリウスも母親同様、人知れず離宮で一生を終えるはずだった。  しかし突然メイナードが大病を(わずら)い宮廷は大混乱。    有事の際のスペアが必要になった王室は、それまで見向きもしなかったシリウスを急遽王宮に呼び寄せ、徹底的に教育した。  修行ともいえる過酷な日々を終えたシリウスは、王の資質を持った立派な青年に。    幽閉されていた日陰者が一気に王位継承第二位に躍り出たことで、宮廷はメイナード派とシリウス派に大きく分かれた。
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