2277人が本棚に入れています
本棚に追加
それでもやはり正妃の子であるメイナードの影響力は強く、シリウスは劣勢に立たされている。
「陛下がご病気で療養している隙に、メイナード殿下はシリウス殿下を亡き者にしたいようです。わざと騎士団大隊長の身分を与え、頻繁に紛争地域への出撃命令を下しているとか」
「王位を争っているとはいえ、弟を戦地へ送り出すなんて……」
兄弟なのに酷い、と言いかけて、私は口をつぐんだ。
兄弟だからこそ、憎しみが強まるのかもしれない。
……ミーティアが私を殺そうとしたように。
「ごめんなさい、話を続けて」
「はい。病を抱えていたメイナード殿下は、聖女様の力で健康を取り戻し、派閥は勢いを増しております。中には『不要のスペアは始末してしまえ』と言う貴族もいるとか」
耳を塞ぎたくなるような酷い話。
(シリウス殿下は、生き残るために謀反を起こすのかも……)
彼の悲惨な境遇に、胸が苦しくなる。
利用価値があるうちは良いが邪魔者になった途端、容赦なく捨てられる。
それがどれほど辛いことか、私は良く知っていた。
最初のコメントを投稿しよう!