不要のスペア

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 夜会に出てからというもの、私の元には連日パーティの招待状が大量に届くようになった。  美貌の令嬢に、世間は興味津々らしい。   (流行に敏感なミーティアのことだもの。平民のアデルが社交界で目立てば、嫉妬して必ず接近してくるはず。お呼びがかかるのを待ちましょう)    私はまず夜会に出る際は、貴族女性が好む装飾品やドレスを身につけた。  自分自身が歩くマネキンとなって、シレーネ商会が扱う商品をさりげなくアピールする作戦だ。 『そのドレス、素敵ね』『わたくしも欲しいわ』と声をかけられた時には、かつて培った営業スキルを存分に活かし、商品の魅力をお伝えする。  ファッション、美容、健康などなど……。その人の好みや状況、欲しているものを把握し、良質な物を厳選しておすすめする。  もちろん無理強いはしない。商売は信頼の積み重ねが基本だから。    かつて過酷な営業や接待に従事していた私は、連日の夜会など苦にもならない。    むしろ楽しみつつ、積極的に人脈作りにいそしんだ。  徐々に『シレーネ令嬢に聞けば、良い品が手に入る』という口コミが広がり、気付けば私は流行の発信者――いわば社交界のインフルエンサー的な立ち位置になっていた。
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