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本当に忙しくなって。
社員食堂で食べることが増えた。
「最近あの麺屋、
行ってないのか?」
ふと隣に。
他班の先輩が座る。
「シュウさん」
「あそこの店員さん、
お前のこと心配してたぞ。
忙しくて飯食えてないんじゃないかって」
「大丈夫ですよ。
社食で食えてるって、
伝えてください」
「そんくらい自分で言いに行けよ。
あとちゃんと謝れ」
「え、」
なんで知って。
「お前がデートすっぽかした話は聞いた。
店長と店員さん、
めっちゃ怒ってたぞ」
「ちょ、」
「で、
その日のこと思い出したんでな。
お前が自分からヘルプ入ったことも、
話しといた」
たしかにシュウが一緒の日だった。
「うっわ…
シュウさん酷いっすよ」
「酷いのはお前だ」
たしかにシュウに言った。
帰ってもすることない、と。
そんなのは分かってる。
「デートすっぽかすのも、
嘘つくのも、
この仕事してりゃあるだろう。
それだけなら俺も庇ってやったさ。
けどお前は、
そのまま関係を切ろうとした。
それが一番酷い」
「このまま忘れた方が、
お互い、
いいじゃないですか」
「普通の店ならな。
訓練生の頃から通ってる飯屋だろ。
俺より付き合い長い相手を、
そんな簡単に切ろうとするな」
「なんでシュウさんに、
そこまで言われなきゃなんないんすか」
「そんなの、
ブルーム始めるって聞いたからだろ」
スプーンでカイトの顔を指した。
「先輩として口出させてもらう。
ちゃんと人の中にいろ。
守るつもりで引くな。
そんなんじゃ飛べなくなるぞ」
釘を刺して。
去り際に。
「事情説明は俺が代わってやったんだから、
お前はただ謝るだけだろ。
行ってこい」
なおさら行けるわけないだろ。
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