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鏡座。
歌姫座。
水盆座。
行きたくない。
ひまわり座。
雪室座。
縦笛座。
やっぱり行きたくない。
靴下座。
扉座。
蝶座。
それでも。
言われたことに逆らえない従順さから。
カイトは。
麺屋に向かう通りを歩いていた。
星座を数えて。
気を逸らす。
ただ謝るだけだ。
それで終わりだ。
そう言い聞かせて。
重い足を。
なんとか運ぶ。
「ん?」
見上げた星座。
蝶の翅が欠けている。
ゴミが降るのだろうか。
目を凝らす。
やっぱりゴミだ。
影が。
近づく速度が。
思ったより早い。
「なんで警報が…!」
鳴らないのかと。
言う前に。
通信機で。
勤務班の直通番号を押していた。
「ユキさん、カイトです!
北北東の方角、
高度はもう中層に入る辺り、
ゴミが降ってます!」
叫びながら。
塔へ。
駆け戻る。
その頭上を。
すれ違うように。
鉄の鳥が駆けていく。
「ん?」
アミは。
店の暖簾をくぐって。
通りに顔を出す。
気のせいか。
「アミちゃんどうしたの?」
「いえ」
戻ろうとしたところで。
パチパチと。
微かな音がした。
「なんの音?」
店長が気づいたところで。
フッと。
店の灯りが消える。
「停電!」
周りの店も。
家も。
灯りが消えていく。
「どうなってるの…」
『電化製品等の発火の恐れがあります。
電源を落としてから、
落ち着いて避難してください』
放送が流れる。
空を。
鉄の鳥が。
いつもより多く。
飛んでいく。
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