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訓練と同じだ。
右。
左。
その奥にもう一つ。
あれは1発じゃ砕けない。
近づいて撃つ。
欠片の降る中を抜けて。
もう一度撃つ。
臭い。
マスクをしていても臭う。
おそらく浴びた液のせいだ。
自分自身から臭う。
息ができない。
苦しい。
視野が狭くなる。
指先の感覚が無くなる。
身体が宙に浮いたようで。
どこが上か分からない。
やけに時間が遅く流れる。
撃っても撃っても終わりが来ない。
いつまでやるんだ。
いつまで。
「カイ!
一度戻れ!」
下でサポートに入ってくれてる副班長だ。
「あと1個撃ったら…!」
無理やり機体を捻って撃ち抜き。
空を見上げる。
ゴミは。
まだ蠢いている。
押し潰すようにして。
肺から息を吐き出す。
そうしないと吸えない。
その時。
「カイ?!」
一瞬遅れて自分でも気づく。
推力装置が。
急に。
動きを止めた。
「は?」
機体が下降していく。
「嘘だろ!」
故障か。
再起動する。
動かない。
落ちて行く。
振り返る。
塔は遠すぎる。
戻れない。
逆を見る。
ゴミ山だ。
機体をゴミ山へ向ける。
落ちて。
落ちて。
家々の上を。
撫でるように。
滑空して。
都市の外れに。
ぐしゃりと。
落ちた。
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