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「…なんだってんだよ」
頭が痛い。
腕も。
足も痛い。
息を吸う。
吸えているのか分からない。
吐いても。
吐いているのか分からない。
痛む腕を動かす。
身体に触れる。
感覚のあるところと。
ないところと。
視界がぐるぐる回るのが。
少しずつ治まってくる。
耳鳴りがしているけど。
上空で鉄の鳥が飛ぶ音がしている。
痛む腕を押して。
身体を起こす。
パラパラと。
自分の上に積もっていたゴミが落ちる。
ブルームは。
動くだろうか。
落ちる前から動かなかったから。
無理か。
計器がみんなおかしな数値になっている。
恒星風で壊れたのだろう。
タイマーも故障している。
いつまでも3分経たないと思った。
「せめて塔まで飛べないか」
通信機も壊れたらしい。
なんの応答もない。
救助を待ってはいられない。
なるべく軽くして。
戻れさえすればいい。
エンジンをかけ直そうとした。
その背に。
「カイト?」
呼びかける声があった。
「誰?!」
さっと振り返る。
「アミ…」
「あの、
空を見てたら、
こっちに来るのが見えて、
大丈夫かなって、
心配で」
恐る恐る。
近寄ってくる。
「大丈夫だよ。
危ないから家の中入ってろよ」
やめろ。
見るな。
拾ったゴミも。
汚れた姿も。
「本当に大丈夫なの?
怪我してない…?」
近づいてくる。
「いいから戻れって」
背を向ける。
エンジンをかけ直そうと。
「でも、
血みたいなのが」
手を伸ばしてくるのを。
「触るな!」
振り払った。
「あ…」
叩かれた手を。
凝視していた。
なんでこうなるんだ。
謝らなきゃいけなかった。
約束をすっぽかしたことも。
嘘をついたことも。
そのまま避けてきたことも。
傷つけたかったわけじゃないんだ。
「…ごめん」
驚くほど。
情けない声が出た。
微かに聞こえたその言葉に。
アミは。
顔を上げ。
カイトを。
抱きしめた。
びくりと。
揺れたのは一瞬だった。
彼女の温かさと。
懐かしい店の匂いを感じて。
緊張の糸が切れてしまった。
そのまま。
ゴミの中に倒れ込んだ。
すぐに離れないと。
汚れた服を捨てて。
シャワーを浴びさせないと。
汚いのに。
「ごめん、
ごめん…」
頭が痛い。
朦朧とする意識の中で。
アミを抱きしめる。
見上げると。
鉄の鳥が舞う。
その向こうに。
満天の星が広がっている。
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