kite

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この星の。 弱い重力に捕まったゴミが。 ゆっくりと都市へ向かって落ちていくのを。 空中で拾う。 空を飛べる、一人乗りの機械がある。 鉄の鳥と呼んでいて。 それでゴミの降る空へ出る。 鳥は鉄の弾を撃つ。 それでゴミを小さく砕く。 それを吸い込み口から回収して。 腹に溜める。 ある程度は腹の中で圧縮できる。 でも。 重くなって飛びにくい。 「カイ、  一度戻れ」 動きが鈍くなったのを見て。 班長が言う。 「もう1個拾ったら、  戻りますよ」 たしかに機体が重たい。 無理矢理走らせて。 拾う時。 腕に。 何かが当たった。 「カイ、  腕」 鉄の鳥の腹を開けに戻ると。 整備係から。 タオルを渡された。 見ると。 腕に黒い汚れがこびりついている。 タオルで拭うと。 赤黒く広がる。 きつい匂いが鼻をつく。 「着替えますか?」 「まだ降ってるし、  後にしますよ」 「今日は“当たり”ですか…」 整備係は顔をしかめて空を見る。 「そうだな」 言っても始まらない。 装備を整えて。 腹を閉めた鳥に乗り。 空へ駆け戻る。 上空に。 班長がゴミを撃ちながら。 指揮をとっている。 ゴミを砕くのは。 ブルームという軽い鳥だ。 腹にはほとんどゴミを入れられない。 そのかわり。 弾をたくさん積んで。 高く飛べる。 ブルームに乗れるのは。 限られた人だけ。 その下で。 砕いたゴミを拾うのが、ダストパン。 強力な圧縮装置と推進装置を持っていて。 大きいけど早くて。 たくさん拾える。 「戻りました」 班長に言って。 下につく。 カイもまだ。 ブルームに乗ったことはない。 でも。 いつか乗るのが目標だ。
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