kite

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ゴミが。 全然降らなかった。 恐ろしく晴れていた。 「シュウさん。  シロの子、  大丈夫ですかね」 シロの班の先輩に聞いてみる。 白熊座。 白詰草座。 白磁器座。 星座を数えながら。 聞いてみる。 「まだ分からない」 「こんなに晴れてるのに」 「晴れてるからだろ」 「そうですよね」 晴れ渡る空ほど。 残酷だ。 「さっき休憩中に、  事務の子が伝言預かってくれたの聞いたら、  とりあえず病院行ったって言ってた」 「いくつになったんでしたっけ」 「5歳だって」 「5歳…  ここで暮らすには、  まだ小さすぎたんじゃ」 「地下の施設も限界なんだろう」 「そうですね…」 空は。 星々が輝いて。 ちっとも陰らない。 「降りそうにないし、  ヘルプ頼んどいて悪いけど、  もうもどってもいいぞ?」 「いえ、  帰ってもすることないんで。  ちょっとぐらい降ってくれた方がいいです」 立ち上がる。 「飛んできます」 この星は。 恒星からの目に見えない光が飛んで。 人の身体に悪影響がある。 子どもだと特にそうだ。 体質によっては。 地上では生きられない。 星座が一つも陰らない。 今日のような晴れた日は。 恒星の光も強いのだろう。 鳥の巣座。 卵座。 雛鳥座。 そのそばには。 親鳥を意味する燕座。 嘴に位置するのは。 黄色の一等星。 雛鳥に与えるために捕まえた。 金色の虫を咥えている。 目に傷を負いながら。 子の食べ物を獲る親燕の逸話に因むとか。 やめた。 くるりと宙返りして。 塔へ戻る。 物心ついた頃から地上にいるカイトは。 とうに生殖機能は失っている。 シロは地下生まれだったが。 この仕事についた時に。 自分で産むことは諦めたと言っていた。 シロが育てているのは養子だ。 地下の施設から引き取った。 自分は。 子どもが欲しいなんて思ったことはなかった。 つくれないことは知っていたし。 そうしたいとも思わない。 養子を貰いたいとも思わない。 だからこの仕事ができると思ったし。 自分のような人間が。 適任だと思う。 一生ひとりで。 自分のためだけに生きる人間が。
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