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あれから店に行っていない。
忙しくなったフリをして。
数週間になる。
そこへ。
班長から急に話があった。
別室に呼ばれ。
折り入って。
「お前、
ブルームに乗る気は、
あるか?」
班長の肩越しに。
窓枠に切り抜かれた。
空が見えていた。
惑星は沈み。
凧座が高く昇る。
「…あります」
その場ですぐに答えていた。
そうだ。
自分のためだけに働くのが。
自分にはあってる。
それにブルームは。
ずっと目標にしてきたことだ。
「今度うちの班も新人を入れることになるし、
次の段階を考えてほしくてな。
ちょうどユキさんも、
シロに教えると言ってた」
ちょっと待て。
「シロもですか?!」
「ああ」
「でもあいつ、
子どもも小さいのに」
「仕事で乗れるようになるまでは、
年単位で時間がかかるし、
主力になるのはもっと先だ」
「そりゃあそうですけど…」
班長は。
少し。
間を置いて。
「別に同期と張り合えって意味じゃない。
きついことを背負わせることになる。
よく考えてみてくれ。
今日は話だけだ」
班長は立ち上がり。
「どっちにしろ俺はやります。
ブルームを教えてください」
「考えろって」
笑って部屋を出ていった。
考えるまでもない。
むしろシロだろ。
ちゃんと考えて返事したのか?
「シロ!」
廊下で見つけて。
呼び止めた。
「どうした」
「お前、
ブルームの訓練、
受けることにしたのか?」
シロは。
その濃い色の目を真っ直ぐに。
「うん」
「なんで?
お前自分の子になんて言うんだよ」
「そのまま言うよ」
「そのままって…」
「街を守るための汚れ仕事をしてる。
本当は、
この社会を、
その世界の仕組みを、
なんとかすべきだったけど、
そうするには時間がなくて、
人を守るという目先のことのために、
自分の手を汚したって言うよ」
「シロ!」
怒鳴ってしまった。
でも。
シロは怯みもせずに見返してくる。
耐えられずにこちらが目を逸らす。
「なんで子どもを引き取ったんだよ。
なんで、
ブルームもやるんだよ」
「それが自分だから」
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