kite

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満天の。 空を見上げる。 街並みを見下ろせる高い塔の上。 惑星が沈んだ夜でも。 通りは賑わっている。 ゴミ拾いたちが拾い物を売りに来て。 金で飯を買っている。 商売道具を買っているものもいる。 情報を買っているものも。 そんな人の行き来を見ながら。 塔の上では。 仕事はまだ終わらない。 手がジリジリと痛む。 今日は一段ときつい。 感触の残る指先を。 星明かりにかざす。 「カワセミ座、  灯台座、  ユキヒョウ座…」 星座をなぞりながら。 毎日毎夜。 思い出す。 自分を育てた姉がいた。 でもある日突然。 仕事に出たきり帰らず。 それから何年経っただろう。 生き方は姉が教えてくれた。 働いて。 食っていく。 重労働だけど。 飯には困らない。 姉は他にも教えてくれたことがある。 ユキヒョウ座の目は星じゃない。 渦を巻いた銀河だ。 星がたくさん集まったもの。 ずっと遠くにある。 灯台座の一番上の赤い星は。 時々陰る。 暗い星の裏に行くから。 その二つの星は。 同じくらいの力で引っ張り合っていて。 お互いの中心を軸にして回っている。 カワセミ座の右の翼の位置にあるのは。 綺麗な青緑の星雲… 姉の言葉を思い出しながら。 辿った先の。 光が。 黒い影に隠れる。 「来た」 目を凝らす。 黒い影は。 ゆっくりと大きくなりながら。 周りの星々を飲み込みながら。 近づいてきている。 もうひと仕事だ。 『宇宙ゴミが都市上空に侵入しました。  住民の皆さんは、  屋内に避難して下さい』 警報が鳴り響く。 「カイ、  出るよ!」 「はい!」 班長の声に。 立ち上がって答える。 そう。 ここは。 ゴミの降る星。 鉄くずの降り積もる広大なゴミ山と。 それを切り拓いて賑わう都市。 その空を飛び。 ゴミを拾う人々の話。
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