コンテスト

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コンテスト

都会では、建設関係のCADオペレーターをしていた。 地元では、その様な求人を見ることもない。 私これから何しよう。。。 町の活気のなさに自分もまったく無気力。 この町で、自分はイケてると錯覚していた。 なぜか、変な自信だけがあった。 今思えばどこからそんな気持ちが湧き出てくるのかわからない。 でも、この町を何とかしたいなぁ。と勝手に思っていた。 都市から1時間程の離れた町なのに、新しい情報や商品すら 3年は遅れていると思った。 そんな時に 地元情報誌で「空き店舗コンクール」 賞金が最優秀賞「5万円!」に目がとまった。 取り憑かれた様に思いのままに、仮の空き店舗を想定して 「CAFE」を提案した。 何をするのか企画書も作り、図面、店舗模型も要らないダンボールで作製し 夜な夜な、やる気スイッチが入り凄い勢いで完成させた。 締め切りギリギリでコンクール受付事務所に作品を持ち込んだ。 目にはクマ、疲れた姿に受付の担当の女性はこの人は 何を持ってきたのだろうとキョトンとしていた。   もうすでに、市内の建築業者様の立派な作品が並んでいた。 なぜか、ため息がでてしまった。足早にこの場所から去った。 この蔵と赤レンガが一体となった昭和の美容室跡の空き店舗を 気に入り勝手に題材としてお借りした。 1ケ月が経った頃、変わらず不安定な生活を送っていて、 短期間の派遣で仕事を繋いでいた。 すっかり、コンクールに出品した事で満足していて 出品した事すら忘れていた。 夕方、仕事から帰宅し家のポストを開けると 一通の白い封筒が届いていた。 差出人は「空き店舗コンクール」だ! えっ⁈もしかして?少しだけ胸が高鳴った。でも、まさか。。。 恐る恐る封を開けた。白いA4の用紙には 「最優秀賞」に選ばれました!! 文字が目に飛び込んできた。 お父さん、お母さん、私、私「最優秀賞!」 滝のように涙が溢れ出た。 私、まだ捨てたもんじゃない!捨てなくて良かった。 賞金よりも選んでもらった事が相当に嬉しかった。 まだ、世の中に必要とされているかも。 一瞬、1ミリの自信と希望を感じた。 指定された日時に表彰式へと向かった。 会場はそわそわしていた、各賞を受賞した人、団体や 会社関係者も沢山いた。 猫背気味にしれっと席に着いた。「えっ、あの人なの⁈」等など ひそひそ声が聞こえてきた。 田舎特有の人の事が気になる雰囲気に居心地は悪く 早く会場を後にしたかった。 表彰状とJCBギフト券「5万円」を頂いた。 カメラのシャッター音が小さな会場に響いた。 ギフト券1,000円分×50枚は厚かった。 店舗計画や提案は譲渡するという内容でサインをした。 足早に会場を去ろうとするも、出口で地元の新聞の記者やら 数名が待ち構えていて質問ぜめにあった。  お決まりの質問に「今のお気持ちは?」 「地元の方ですか?」「職場は?」など フラッシュも浴びた。えっ、写真は勘弁してほしい。 米倉涼子バリバリの「私、失敗しないので」みたいなイイ女じゃないし。 人気アイドル歌手か、又は悪いことして釈明するみたいな パパラッチの様な気分を味わった。 こんな経験は2度と無いだろう。 何年経っても思い出すし、町で空き店舗を借りて事業をしたら助成金が 出る時期にカフェやら雑貨店がオープンしたり、古い店舗もリニューアル されたりした。 何かあの時の提案した事が取り入れられてる? 気のせいか、偶然か。とオープンしたお店を見てはニヤニヤした。 勝手にまんざらでも無かったのかと、少しだけ自信過剰になってみたりした。 分厚いJCBのギフト券は、さすがに簡単には使えない。 タンスの引出しの奥に静かに眠っている。 この空き店舗の題材とした昭和の美容室、偶然にも伯父さんのいた病院の 斜め向かいだった。 そして、あの時、伯父さんが夢の中で 「住宅購入の手付金50,000円貸してくれる?」と 「返すから!必ず。」と私にニコニコしながら言っていたこと。 もしかして、この賞金の50,000円って伯父さんが返してくれたのかも。
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