133人が本棚に入れています
本棚に追加
「首尾は、上々。週二であんなことしてたのに、突然ひと月も触れなくなったら、まあ、こうなっちゃうよね。……ねえ、裕ちゃん」
木暮の声が、急に、気味の悪いほど優しくなった。
「裕ちゃん見てたらさ、欲しくなっちゃった。久しぶりに、行こうよ、ホテル」
撫でていた手をゆっくりとシャツから抜き、今度は平沢の手ごと引き寄せて口を這わせる。
「ぁ…… っ、うはぁ」
唇を割って現れたなまめかしい舌が指の股に沿って動くたびに、平沢の口からあられもない声が出た。
「すごく、気持ちよくしてあげる。前よりもっと良くしてあげるよ」
そのまま小指をまるごと口に含んだ。付け根まで咥えこんだ口もとが卑猥に動き、中でのたうつ舌が指を存分になぶっているのがよくわかる。
岡田はあまりの状況に言葉がなかった。いや、もっと正直になるならば、目の前に広がる淫靡すぎる空気に当てられて、自分の股間に熱さを感じてすらいた。かろうじて、おい、ヒラサワ、と弱々しい声をひねり出したのは理性の最後のひとかけらだ。
しかしそんな声は、もはや平沢の耳には届かない。殺してやるとまで言われたのに、平沢には誘惑にあらがう力は皆無だった。指をしゃぶられ、快楽でうなずくことすら出来ないだけで、情けなく涙を浮かべた嬉しそうな表情がすべてを物語っていた。
「……なーんて、ねっ」
木暮はいきなり、きっぱりと張りのある声で言い、平沢の手をポイっと放り投げた。バン、と音を立てて骨ばった手がテーブルに落ちる。我に返った岡田が平沢を見ると、彼は痛さを感じる余裕もないらしく、息を止めて木暮を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!