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木暮は身を引いて椅子に深々と座り直し、思い出したように冷めたコーヒーを口にした。
「いいよ、もう。許してあげる。裕ちゃんとは結局、相当楽しんじゃったし。俺さ、夏休みにちょっといいことあったんだよね。だから近ごろ機嫌いいんだ。それも元をたどれば、裕ちゃんにもらったお金があればこその話だったし」
……金まで渡してたのか、平沢。
岡田はもはや驚く気にもならなかった。しかしその後、
「ねえ、岡田さん」
と、木暮がこちらを向いたのには驚いた。
初めて名を呼ばれた。っていうか、俺の名を覚えていたのか。
「この人、なんとかしてあげてね。もう病気でしょ、これ。どこか隔離とかしちゃったほうがいいよ。麻薬の中毒みたいにさ。……間違っても」
木暮は急に、堅い、刺すような口調になった。
「間違っても、俺の前に二度と現れないようにね。もし岡田さんみたいに学校までノコノコ来たら、俺、次は確実に、やるから。そしたらもう戻れない。ひと月も会わなきゃ本当に死んじゃうよ」
わざとらしい憐みの視線を平沢に送る。
「お、俺は、それでも、それでもいいんだ」
平沢は小さな震える声を出した。
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